高等教育とジェンダー格差

OECDの発表による学習到達度調査(PISA)によれば、科学的応用力と数学的応用力の平均得点は、ともにOECD加盟国中1位、読解力は2位でした。日本の15歳には、世界トップ水準の理数学力、読解力があると思われます。科学的応用力と数学的応用力は、男女別にみても男子、女子とも加盟国中1位です。しかし、大学進学時点では、男子と女子で理系の選択率に大きな差が出てしまいます。
数学的応用力が比較的高いレベルにある生徒は、男女とも4割を超しています。しかし、2023年度の大学1年生をみると理工農学部の割合は、男子は3割、女子は1割と3倍の開きがあります。そもそも女子は分母の進学者数が少数です。最上位層の割合の男女差も含め、日本の教育は15歳の潜在能力を生かし切れていません。
女子の理系進学を巡る問題に関して、数学ステレオタイプ、就職の2つが障害に挙げられます。女子は数学が苦手、数学は男性的という思い込みです。就職については、理工系学部卒業後のキャリアが見えにくいことがあります。理系の中でも医療保健系に比べ理工学系は将来のキャリアが見えにくく、情報不足を解消するには、教育界と産業界の協力が必要になります。
大学界全体を見渡しても、国公私立大の女性学長は2023年度で113人に過ぎず、医学部があるような大規模総合大学ではいまだにゼロです。改善には大学院進学率の引き上げによる女性研究者の裾野拡大、出産などのライフイベントも踏まえたキャリアパスの整備、経営層への公平・積極的な登用など多くの課題があります。少子化で日本の教育、特に高等教育は量から質への転換点を迎えています。若者一人ひとりの能力・個性の発揮であり、それは片翼飛行の解消なしには実現しません。

 

(2024年2月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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