高等教育の重要性

 わが国の高等教育に対する公的な財政支出は、OECD中でも低率です。日本の高等教育段階への公財政教育支出は、初等教育から高等教育以外の中等後教育段階よりも低く、日本の高等教育の在学者1人当たりの公財政教育支出は8,184米ドルであるのに比べ、OECD平均は15,102米ドルです。

 高等教育は内容の水準が高度であるため、必要となる教員や費用は他の教育段階よりも高額になるのは当然であり、多くの国では公的な支出を投入することで維持しています。しかし日本は、より低い教育段階よりも高等教育における在学者1人当たりの公的な支出が少なく、教育全体への公的な支出額も、加盟国内で決して高くありません。

 日本でこのように高等教育に対する公的な支出が少ない理由は、大学の学部生に占める私立大学在学者の割合が非常に大きく、公的補助も少ないためです。高等教育の実績を求めながら、国としての投資が少ないのは一貫性を欠いています。

 教育と労働市場の関係も、高等教育のあり方を考える上で大切な要素です。企業の採用活動の前倒しが歯止めなく進んでいます。OECDの国際成人力調査によれば、日本は学歴・資格に関するオーバークオリフィケーション、スキルに関するアンダースキル、専攻に関するミスマッチのいずれも、OECD平均と比較して著しく多いことが明らかになっています。

 欧州のビジネススクールIMDの世界競争力年鑑2025によれば、日本の経済界は、管理職の国際経験、迅速な意思決定、機会と脅威対応力など複数の点で、データのある69カ国・地域中69位、すなわち最下位です。DXの進展も遅れており、経営層の高齢化や日本人男性ばかりの多様性のなさなども顕著です。高等教育の費用負担構造および労働市場構造という、2つの重大な問題に踏み込むべきです。

(2026年3月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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