高額な新薬や治療法の広がりなどで、高額療養費は医療費全体の倍のスピードで伸びています。政府が2023年に決定したこども未来戦略で、社会保障費の歳出を減らし、児童手当の拡充などの財源とすることが決まったことも、引き上げの検討の背景となりました。政府は、昨年末に高額療養費制度の負担上限額について、2025年夏から3段階に分けて引き上げていく案をまとめました。
それに対して、患者団体からの不安の声は強く、政府は国会の予算審議の場で野党から激しい批判を受けました。見直しの検討過程で厚生労働省が患者側の意見を十分聞いていなかったとの批判が大きかったことから、患者らの意見を聞いたうえで、今年秋までに改めて見直し内容を検討するとしています。
患者団体の強い反発を受け、政府は2月に多数回該当の上限を据え置くなどの修正案を提案しましたが、それでも反発はやまず、最終的には今夏からの制度改正自体を見送ることになりました。患者団体は多数回該当の人の負担増に特に強く反発しており、この上限額をどうするかも今後の議論のポイントとなります。
(2025年5月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)