高齢のドライバーの安全対策

75歳以上の高齢運転者が原因となった死亡事故の件数は、昨年までの10年間、400件台で推移しており、最近になって急に増えているわけではありません。しかし、昨年起きた死亡事故を年齢層別に分けたグラフを見ると、80~84歳あるいは、85歳以上になると、事故を起こす危険性が突出しています。高齢者が引き起こす事故の報道を受け、免許を取り消すかどうかの実車試験の必要性が高いことや、安全運転サポート車に運転を限るなど、限定条件付き免許の導入を検討すべきだとの声が聞かれます。
免許の返納に頼るのは限界があります。75歳以上の返納者は、昨年30万人近くになりましたが、その年齢層の免許保有者の1割以下です。70歳以上の4分の3の高齢者は、免許返納をしたくないと答えています。公共交通網が整備されている都市部を除き、地方では車は生活を支える基本的なインフラです。一方的に返納を求められることに、抵抗感は強いものがあります。高齢運転者を社会の片隅に追いやれば、社会の分断を生みます。社会全体の問題として捉え、行政や企業、家庭などが協力して問題解決を図るべきです。
夜間の運転を控える、高速道路での運転を控えるなど自分に合った目標を設定して運転してもらうことも大切です。また、実車試験の結果を踏まえた上で、運転能力に疑問符がつく場合に限定免許を義務付けることも必要になるかもしれません。公共交通機関の利便性向上や、相乗りタクシー整備なども必要になります。

(2019年7月4日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)

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