高齢化ならぬ消齢化という社会現象

わが国は、50歳以上の人口が過半になる転換期を迎えています。人口減と少子高齢化が進み、今や日本人の平均年齢は50歳近くになり、数年後には50歳以上が過半を占めることになります。成人人口をみても40代以上が全体の7割を超えています。この結果、購買層が縦に伸びるコンテンツやアーティストほど、メガヒットにつながってきます。人口という量的な要因だけにとどまらず、価値観など質的変化も大きくなっていきます。20~60代の間では価値観や消費志向の差が消え、日本社会は世代を超えた大きな塊になりつつあります。
50代以上が量的な多数派を占め、価値観の差が老若男女で消えていくと、もちろんビジネスのあり方も変化を迫られます。これまで若者とヤングファミリーをしっかりとらえることがマーケティングの中心でしたが、今後は年齢層を超えた縦型のマーケティングに軸足を置く必要が出てきます。
実際に売り上げが安定しているビジネスは、縦型に強くなっています。ファーストリテイリングのユニクロ、日本マクドナルドホールディングスなど、10代から70代まで普通に利用します。年功序列が揺らぐなどタテの社会秩序は崩れつつありますが、消費については世代レスのタテ社会が広がっています。同時に所得格差は広がり、消費志向の多様性も加速しています。特定の世代向けというモノサシを失い、消費ビジネスは一段と不透明さが増しています。しかし、世代や男女にとらわれなくなる分、チャンスは広がっているとも言えます。

(2023年2月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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