国勢調査によれば、2005年に約386万世帯だった65歳以上の単身高齢者は、2020年に約672万世帯に増えています。あと10年余りで就職氷河期世代も高齢者の仲間入りをします。持ち家がない高齢者が急増し、放置すると生活保護の増加が避けられなくなってしまいます。
独り暮らしの高齢者が増えているものの、家主からは入居を断られることが多くなっています。国土交通省の調査によれば、高齢者や障害者に住宅を貸すことに、大家の7割が拒否感を示しています。外国人には6割、子育て世帯も2割でした。主な理由として他の入居者との協調性や部屋の中での死亡事故、家賃の不払いへの不安が挙げられています。
安価な住まいの確保と見守りサービスを確立しないと、10年後の社会は悲惨な状況になると思われます。公的な介護保険サービスを利用できるのは要介護者だけで、生活困窮者自立支援制度も、原則として自立を目指す若者を想定したものです。身寄りのない高齢者の住まいを確保し、入居後の暮らしも支えられるかどうかが課題となっています。
(2023年7月4日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)