日本老年医学会は、高齢者の安全な薬物療法を改訂しています。年齢を重ねると、1つだけではなく複数の病気にかかりやすくなり、慢性的な症状に悩まされるようになります。そのため高齢者は、いつのまにか多くの種類の薬を長期間服用する多剤併用に陥ります。5~6剤以上を服用する患者に転倒が多くみられるようになり、緊急入院や通院の長期化といった問題が起きることが分かってきました。
今回のガイドラインで前回と大きく違う点は、高齢者に適した処方の流れ図を示し、特に慎重な投与を要する薬物のリストを揚げています。重い副作用が出る薬剤は服用をすぐに中止すると判断するのではなく、服用状況を見直しながら、代わりになる薬や服用法を検討することにしています。高血圧治療薬の場合、一般の大人と同じように高齢者が服用すると、時に血圧が下がりすぎてしまいます。糖尿病治療薬の場合は、血糖値が下がって意識を失う危険があります。通常の3分の1から2分の1の量を目安に適切な服用量を見つける対策が有効です。投与を慎重にする薬とは逆に、推奨する薬も流れ図を示しながら例示しています。
(2016年1月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)
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