高齢者の転倒災害

働く高齢者が巻き込まれる労働災害の増加傾向が続いています。様々な業種に高齢者の活躍が広がる中、死傷者数の多い転倒災害の防止対策など、労働環境の改善に向けた取り組みの重要性が増しています。厚生労働省が発表した労働災害発生状況によれば、60歳以上の死傷者数は前年比10.7%増の3万3,246人に達しています。働く高齢者の増加に伴い、3年連続で増加しています。このうち転倒災害による死傷者は1万2,576人と多く、約3分の1を占めています。転倒防止対策が高齢者の労災減少のカギとなっています。
高齢者が段差につまずいたり、バランスを崩したりして転倒しやすくなるのは、下肢の筋肉の衰えが影響していると考えられています。しかし、自分の身体や認知機能の低下を認識することは困難です。できると過信して無理な動作をした結果、骨折などの労災につながる例も少なくありません。身体計測による実際の身体機能と、本人の認識のズレを見える化するセルフチェックの方法があります。セルフチェックでは、片方の脚だけで何秒立っていられるかなどの身体計測を行うほか、体力に自信があるかといった自己認識に関する9項目の質問への回答をレーダーチャートで比較します。計測結果が自己認識の回答よりも小さい図になった場合は、自分で思っている以上に体が動かず、転倒リスクも高くなっていると考えられます。

(2019年7月29日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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