交通事故が減る中、高齢者の運転による発生件数は高止まりの傾向が続いています。警察庁の調べによれば、認知能力や運動機能の低下が原因で、高齢の運転者が引き起こす交通事故は相変わらず多いとされています。交通事故件数を年齢層別にみると、2015年は65歳以上が全体の19.7%と高い値を示しています。件数は2007年以降、10万件台で推移しています。
事故を未然に防ぐために、警察は運転に不安を覚える高齢者の免許返納をすすめています。身分証明書として免許証を持ちたいと思う高齢者が多いため、自主返納者には代わりになる運転経歴証明書を発行し、返納を後押ししています。しかし、65歳以上の免許保有者は年々増えており、そのうちの返納者の割合は1%程度と少ないのが現状です。認知症の高齢者は返納させるべきですが、グレーゾーンの人には運転可能な年齢を延ばす視点も必要です。75歳以上になると運動能力が下がり、交通事故の危険性は高まります。事故の増加を引き起こさないよう、今まで以上の効果的な対策が重要となります。
(2016年4月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)