高齢者の金融資産

 少子化が進めば、消費の核となる若者が減り、内需は縮みます。しかし現在のところ、少子化対策に即効性はみられません。それを打破するには、わが国の個人金融資産の6割を保有する60代以上の高齢者の団塊ポケットから、いかにしてお金を引出すかにあります。日銀によると、2014年度末の会計の金融資産残高は1708兆円です。巨額の資金は、人口減少時代の内需を支える潜在力を持っています。約6割が高齢者に偏っており、多くは休眠状態にあります。これら資金は、消費を通して実体経済に十分に回ってない状況にあります。
 2014年の世帯平均貯蓄額は1798万円にも上ります。だが世代別にみると、60代が2484万円、70代以上も2452万円と偏っており、20代以下は268万円、30代も610万円にとどまっています。さらに住宅ロ-ンなどの負債を引いた純資産は、40代以下の世帯でマイナスになります。出産や子育てに出費がかさむ世代の資金繰りは、大変厳しいものがあります。長寿化が進むなかで、高齢者世帯も生活の備えは必要ですが、ただ資産のため込みすぎは経済活動にとってマイナスです。次世代の日本を支えるため、どうすればお金を使ってもられるか、企業の智慧が試されます。

(2015年7月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。