65歳以上の高齢者医療で重視する内容について、患者側と医師側の違いが調査されています。高齢者や医師、認知症の人の家族、介護施設職員など計約6,800人に12項目の優先順位が問われています。効果的な治療は、高齢者で1位、介護を受けている高齢者では2位でしたが、高齢者の診療が多い医師では5位でした。
75歳以上の高齢者の状態は多様で、確立された標準治療はありません。がんを含め効果が高い治療法も限られてきます。こうした状況でも、患者は治療によって病気が良くなることへの期待が高く、現実的な見方をする医師との違いが浮き彫りになっています。家族の負担減は、高齢者が2位なのに対し、高齢者の診察が多い医師は6位です。生活の質改善は、それぞれ7位と1位でした。
日常生活での動作や認知機能などについて、医療側と患者側が同じ言葉で情報や価値観を共有すべきです。高齢患者の個別性を踏まえた医療、治す医療から治し支える医療へ転換が求められています。医療者側に治療方針を伝えた際、どんな説明を受けたかを患者自身の言葉で語ってもらう取り組みが必要となります。個々人が病気をどう理解し、受け止めているかを知ることが、溝を埋める有効な手段になります。
(2019年10月28日 読売新聞)
(吉村 やすのり)