少子化の加速で、社会保障制度をどう維持するかが先進国共通の課題となってきています。高齢者比率が高まると年金、医療、介護などの現役世代の負担が増大します。解決策として、高齢者が5歳長く働く70歳定年が世界の潮流になりつつあります。OECDの年金リポート最新版によれば、デンマークのほかオランダやイタリアが、将来70歳かそれ以上への定年の引き上げを見込んでいます。平均余命の延長と定年を連動させる仕組みを導入しています。
2024年の日本の合計特殊出生率は1.15に落ち込みました。2023年の将来推計人口では、2070年の出生率を中位推計である1.36と見込んでいましたが、低下のペースは早くはるかに下回っています。日本を追うようにOECD加盟国の平均出生率も低下が続き、2024年は1.46と1.5を割り込んでいます。出生率低下は世界中に広がり、世界人口も人口爆発を逆回しするように劇的に減ると予想されています。出生率を人口維持できる2.07以上に回復させる妙手は、簡単には出てくるようには思えません。
日本も急がなければならないのは、現役世代が高齢世代に仕送りをするという、人口維持制度を見直すことにあります。70歳までは税や社会保険料を支払う現役でいてもらい、受け取る側になるのを待ってもらうことが改革の肝になります。
現在は再雇用も含めて実質65歳まで雇用を継続し、公的年金も65歳から支給を開始するルールとなっています。70歳までの雇用維持は企業の努力義務にとどまっています。年金の支給開始年齢を5歳延ばすのなら、日本もプラス5歳働き続けられる社会を実現しなければなりません。+5歳社会のロードマップが要ります。慢性的な人手不足の時代だけに、企業は人員計画に高齢社員を組み込みやすい局面ではあります。
2022年に男性で72.57歳、女性で75.45歳と言われる健康寿命をどう延ばすかも大切な課題です。病気で働けなくなる人たちをどうカバーするのかは、医療保険や介護保険のあり方にも影響を与えます。私的年金を強化する資産形成も支援する必要があります。

(2025年12月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





