第632回松山産婦人科医会例会にて、「着床前遺伝学的検査 ― 往古来今 ― 」と題してお話をさせていただきます。今回はWeb開催です。
わが国における着床前遺伝学的検査(PGT)は、1998年より症例ごとに日本産科婦人科学会内で審査をし、承認された生命予後が厳しい重篤な遺伝性疾患においてのみ実施されてきました。2000年頃より臨床応用されていた欧米と異なり、学会は胚の尊厳、優性思想に基づく胚の廃棄が許されるのかとの観点から、PGT-Aの臨床応用に対しては極めて慎重な立場を取ってきました。国内におけるPGT-A/SRの臨床導入の事前検討として、2017年のパイロットスタディや2020年の特別臨床研究の結果を踏まえて、学会は2022年1月にPGTの新見解を発表しています。
これまでの学会の対応は、 PGT-A/SRの有用性についての医学的根拠が十分でないとする現在の諸外国の見解と矛盾せず、理に適っていたものと考えられます。
(吉村 やすのり)