2018年問題とは

日本の18歳人口は、ピークだった1994年の205万人から次第に減少し、近年は120万人程度を維持していました。しかし、2018年から再び減少に転じ、2031年には99万人と100万人をも下回る見通しです。さらに大学、短期大学、専門学校、高等専門学校4年目の合計の2017年度の進学率は約81%と頭打ちです。一方、私立大学・短大数は932校にも及び、定員割れの学校数も229校と約39%にも達しています。さらに学校法人の17%が経営難に陥っています。大学・短大進学率を2015年と同率と仮定した推計によれば、2031年の入学者数は約56万人と、2015年の約68万人に比べて約12万人も少なくなります。仮に進学率が高まるとしても、定員を満たすことのできない大学がより一層増えることになります。このように、大学の入学者数の減少による経営難に陥り、大学の淘汰が本格化することを大学の2018年問題と呼びます。
この2018年問題は的確な人口予測に基づくものであり、以前から指摘されていました。日本では大学数でも学生数でもその約7割は私立大学が占めています。特に問題なのは、定員割れが深刻化していく地方の私立大学です。地方自治体にとっては、域内の大学の存続は人口維持にも関わってきます。公費を投入してでも私立大学を存続させようと手を打つ例が目立ってきています。しかし、地方の新興私立大学が、実績ある地元の国立大学と伍するのは並大抵ではありません。卒業生がその地域で就職できるようにグランドデザインを描いて大学を地域に組み込まなければ、公費を投入しても一時的な延命措置で終わってしまいます。
東京学芸大学の田中敬文准教授は、経営に行き詰った地方大私立大学に残された道は、撤退、他大学との統合、学部の切り売りしかないと述べておられます。文部科学省は、定員割れ、5年程度の連続赤字、教育の質が低評価といった条件に該当した場合に私学助成金を減額する方針を示しています。こうした方策は撤退を促すには有効かもしれません。私立大学の突発的な破綻により、路頭に迷う学生が出ないようにすることが最重要課題です。そのためには田中氏が言う私立大学の名誉ある撤退に向けた施策が急がれます。

(Wedge March 2018 vol.30 No.3)
(吉村 やすのり)

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