2024年に国内で生まれた日本人の子どもは、68万7千人程度と推計され、70万人を下回る見込みです。2023年の出生数の72万7,288人に比べて、5.5%程度減少する見通しです。2年前の2022年に77万759人となり初めて80万人を割ったばかりで、少子化に歯止めがかかりません。婚姻数は推計で47万5千組程度で、2023年の47万4,741組から概ね横ばいの見通しです。
少子化が加速すれば、現役世代の働き手の減少につながります。既に人手不足が深刻な介護分野のほか、地方も都市部も様々な業界でサービスが提供できなくなる恐れがあります。政府は、年3.6兆円規模の少子化対策を昨年末に閣議決定し、児童手当の拡充をはじめとした経済的支援や、保護者の就労要件を問わずに保育所などを利用できる制度などを盛り込んでいます。
結婚や出産は個人の自由で、子どもを持たない選択も尊重されるべきだとする一方で、子育てとキャリアの両立を希望する人への支援については、育児休業制度などが浸透し、仕事を続ける人が多数派になっています。子育て世代に対する支援を続けることは大切ですが、それだけで現在の少子化傾向に歯止めをかけることは困難です。今後は人口減少を前提とした経済政策や生産性向上のための働き方改革が必要になってきます。多様性を認める社会の実現とともに、well-beingが実感できるreproductive rightsの確立が強く求められます。
(2024年12月25日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)