1998年の厚生労働白書で使用された言葉で、子どもは3歳までは、常時家庭において母親の手で育てないと、その後の成長に悪影響を及ぼすものという考え方です。欧米の母子研究の影響などを受けて60年代に広まったとされています。しかしながら、現在は3歳児神話に少なくとも合理的な根拠や実証的研究の成果は認められないとされています。子育ての多様性を考えると、3歳児神話が支障になっている場合もあります。
米国立小児保健・人間発達研究所は、全米の新生児約1,300人を1991年から5年間追跡しています。それによれば、母親だけで育てた場合と保育サービスなど母親以外の人も含めて育てた場合とで、子どもの発達に有意な差はなかったとの結論でした。わが国の269組の母子を12年間追跡した調査でも、3歳未満で母親が働いても、子どもの問題行動や、子どもに聞いた母子関係の良好さ、母親に聞いた子どもへの愛情への悪影響は認められていません。逆に近年では、親が仕事に子育てにと複数の役割を持つとリフレッシュや成長につながり、子どもにも良い影響を与えるとの研究成果も出ています。
こうした研究は、母親が子育てをしなくていいと言っているわけではありません。子どもには、必要な衣食住を満たし、スキンシップを含めた温かいコミュニケーションを取ってくれる人が必要です。1歳半ごろからは社会のルールを学ぶ必要があります。しかし、家庭によって状況は様々であり、子どもの育て方や教育に対する考え方も家庭ごとに違います。しかし、母親だけではなく、父親の協力が絶対に必要となります。経済的理由からだけではなく、女性のキャリア形成のためにも3年間以上職場を離れることは推奨できません。
(吉村 やすのり)