日本経済研究センターの推計によれば、日本全体の実質GDPは、2024年の4位(3.5兆ドル)から2075年に11位(4.4兆ドル)となります。マイナス成長は回避するものの、2071~2075年の平均成長率は0.3%にとどまっています。国別GDPでは、米国と中国が1位と2位を維持し続けます。人口動態も独自に推計した結果、1人の女性が生涯のうちに産む子どもの数の平均値を示す合計特殊出生率は、中国は2075年に0.8となり、GDP規模の米中逆転は起きないとの試算です。
1人当たりGDPについて、日本は2075年に4万5,800ドル(現在の為替換算で約690万円)と2024年比で1.6倍となるものの、G7では最下位の状態が続いています。2075年に韓国は21位となり、およそ7万9,200ドルとなります。日本の所得水準は、チェコ(27位)、スロベニア(28位)などの中東欧諸国や、ブルネイ(33位)、カザフスタン(36位)、ロシア(42位)なども下回ることになります。
人口減による働き手の減少が経済成長を下押しします。日本の合計特殊出生率は2040年代半ばから2075年まで1.1となり、過去最低だった2023年の1.20を下回ります。日本への流入から流出を差し引いた純移民数は、年23万~24万人程度です。世界5位の移民受け入れ国となります。それでも2075年の総人口はおよそ9,700万人まで減少します。在留外国人数は1,600万人を見込み、外国人の安定的な流入が成長を維持する最低条件となります。
世界全体の成長率は、生成AIの活用による生産性上昇などで2021~2030年は平均3.3%と高まります。その後、主要国の人口減少が重荷となり、2071~2075年には1.3%に鈍化します。世界全体の合計特殊出生率は2075年に1.7まで落ち込み、人口を維持できる水準を大きく下回ることになります。地域別では、東アジアの人口が6億人以上減り、東南アジア・南アジアも将来は人口減に転じます。アフリカは加速を続け、2040年代半ばに東アジアを上回ります。

(2025年3月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)