日本経済研究センターの予測によれば、日本がAIを活用して生産性の向上や人材の適正配置といった社会変革を進めれば、2075年時点で実質のGDPが世界4位になるとの結果が出ています。進められない場合は11位まで後退します。日本の実質GDPは、2024年に米国、中国、ドイツに続いて世界4位でした。
AIは、社会のあらゆる分野に浸透しています。文書作成機能などがある生成AIや、経営戦略立案などができるソフトウェアAGI、調理・警備・外科手術などを担うフィジカルAGIなど影響が及ぶ業務は9割超の分野に上っています。労働市場の変革も進み、生産性が高まり、週の労働時間は現状の38時間から21時間に短縮し、週休4日の社会になるとみられます。
職務内容を明確に示すジョブ型の普及や、定年制の廃止による高齢者の労働参加率の上昇を前提として、人材の適正配置が加速します。GDPに対する日本の教育支出比率は、現在の4.0%からOECD平均の4.9%程度に上昇します。教育への投資や労働時間の減少は社会に大きな変化をもたらします。
日本は想定を大きく超える少子化が進んでいます。現状のままなら人口減のもとで経済は縮小を余儀なくされます。AIによる社会変革を進めれば、世界における競争力を維持できることを長期予測は示しています。

(2025年6月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)