本講演会は、出生前診断のあり方について医学的見地と倫理学的見地から、仏教界の方々や一般参加者とともに語り合うことを目的に開催され、100名近い人々が集い、活発な討論が交された。明治学院大学の柘植あづみ先生は、「出生前診断における女性の選択とはなにか」、さらに大正大学の村上興匡先生は、「大学生と考える出生前診断」について講演された。
出生前診断をめぐる2つの権利は、「親の側の権利」と「生まれてくる子どもの権利」であるといえる。親の権利は、現在という事象であり、個人に帰する問題であり、子どもの権利は未来の事象であり社会の関わる問題である。出生前診断を受け中絶を選択する親の権利と、生まれてくる子どもの権利は対立する。ダウン症をはじめとするさまざまな遺伝性疾患は、人の多様性と理解し、ひとつの個性であるとする考えがある。もしそうであるとするならば、その子どもを育てる親、家族が不幸にならない社会のサポートが必須である。
ひとりの産婦人科医師として出生前診断を改めて考える大変良い機会であった。
(吉村 やすのり)