母子感染症シリ-ズ―Ⅸ

ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1

 HTL-1(ヒトT細胞白血病ウイルス)の感染によりキャリアとなった成人において、CD4陽性T細胞の腫瘍性増殖が起こることがあります。これがATL(成人T細胞白血病)であり、HTLV-1ATLの原因ウイルスです。ATL患者の大多数は、母子感染に起因する成人キャリアからの発症です。HTLV-1キャリアからのATLの生涯発症率は37%程度あり、40歳以上のキャリア約7502000人の中から1年に1人程度発症しています。ATLに有効な治療法はまだ開発されていません。わが国のHTLV-1キャリア成人数は、約108万人と推定されています。以前より沖縄や九州地方でキャリア率が高いとされていますが、近年キャリア全体における他地域在住キャリアが占める割合の増加が指摘されています。その感染経路は、母子感染、血液の移入(輸血、臓器移植、注射)、性交による感染(主に男性から女性)に限られます。なお、針刺し事故によるHTLV-1感染の可能性は、ほとんどないとされています。

(吉村 やすのり)

 

 

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