戦後しばらくまでは、感染症である結核が国民病といわれていましたが、医療水準の向上や理性環境の改善などで、感染症で死亡する人は減ってきています。感染症に変わり今では、がん、高血圧、糖尿病、脳血管障害などが国民病といわれています。しかし、インフルエンザや中東呼吸器症候群(MERS)など感染症の脅威は現在も続いています。こうした感染症には、体力や免疫力など低下した高齢者が罹りやすくなっています。
国の人口動態調査によると、感染症法に規定された病気で死亡したのは2013年で8303人にのぼります。内訳では感染症胃腸炎の2569人が最多です。この病気はウイルス性と細菌性があり、吐き気や下痢を伴います。多くの老人がこの感染症胃腸炎による脱水で死亡します。2位は結核で、薬で基本的に治る病気になりましたが、都市部を中心に、若い頃に感染した高齢者の再発が増えています。3位はインフルエンザで、毎年の流行の度合いで死亡数が変動します。肺炎は、この調査の分類項目に入っていないため上位になっていませんが、肺炎はがん、心臓病に次ぐ日本人の死因3位で、死亡の約95%が65歳以上です。
(2015年7月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)