文部科学省は、各大学に文学部や法学部、経済各部などの人文社会科学系と教員養成系学部の廃止や他分野への転換を求める通知を出し、強く再編を迫っています。旧態依然の運営では勝ち残れないとし、積極的な見直しを断行することを要求しています。これに対し、大学側は、文系の切り捨てだと猛反発しています。すでに、文部省は、全86大学に教員養成系や人文社会科学系学部・大学院の廃止や社会的要請の高い分野への転換を求める通知を出しています。
今回の大学への通知は、文系学部の廃止や転換にまで踏み込み、改革の遅れが目立つ国立大に国際競争力があり、社会に役立つ人材を育てる大学に生まれ変わるように迫っています。文系は、理系に比べ産業創出や技術革新などの成果が見えにくく、産業界からも社会に出て即戦力になる人材を育てていないとの批判もあります。背景には、国の厳しい財政事情があります。大学への運営費交付金は、国立大が法人化された2004年度の総額1兆2415億円から、10年間で1割以上減少しています。国には、限られた予算を理系を中心とする優れた教育研究に集中させたいとの思惑があります。こうした再編は、利益のみを追求する現代社会と同様、大学の本来のあるべき姿とはかけ離れたものととしか思われません。
(2015年7月12日 讀賣新聞)
(吉村 やすのり)