卵子提供の是非をめぐっては、厚生労働省の有識者会議であった厚生科学審議会が、2003年に無償で匿名の第三者からの卵子提供を国内で認める報告書をまとめました。その後、10年以上が経過していますが、国会で審議されることなく、法整備はなされていない状況にあります。海外で有償で卵子の提供を受ける人も多く、自民党などが議員立法による法案提出を現在検討しています。卵子提供をする女性には、採卵時に使う排卵誘発剤の副作用や腹部を針で突くことによる出血や癒着などのリスクが生じます。また卵巣を刺激するためには、少なくとも7日以上の排卵誘発剤を使用するため、ドナ-は通院を余儀なくされます。さらに卵巣過剰刺激症候群などの副作用により入院することもあり、重篤な症状が出た場合の保障体制も問題となります。こうした状況下で無償で卵子を提供してくれるドナ-を探すことが大変に難しいことは容易に想像ができます。
卵子提供による体外受精における親子関係の法律はありませんが、これまでは分娩・母ル-ルが適用されていることもあり、精子提供による生殖補助医療ほど、大きな問題となることはありませんでした。もう一つの問題点は、生まれてきた子どもの出自を知る権利をどのように保障していくかです。今回のOD-NETによる卵子の提供では、生まれた子が幼少の時に卵子提供の事実を告知することや、15歳以上で希望したら提供者情報を知らせることを条件としています。卵子の提供においては、提供を受けた女性が自分自身で 子どもを産んでいるため、精子提供の場合ほど告知が難しいとは思われません。
(吉村 やすのり)