進まない要因
女性の活用が進まない要因として、これまで女性側に問題があるとされてきました。しかし最近では、女性人材の育成に積極的に取り組んでこなかった企業側に原因があるという研究が相次いで発表されるようになっています。英誌エコノミストは、日本企業は女性の能力を無駄していることに無頓着だと、女性人材の浪費を批判しています。
初職を辞めた理由を仕事に関する要因(プッシュ要因)と、結婚や出産といった(プル要因)の2つに分けて出生年別にみたところ、若い世代にはなるほど、仕事関連の離職が多くなっています。家庭要因よりも仕事に関する要因に比重が大きくなってくるのは、バブル崩壊後です。90年代後半になると、労働市場の規制緩和により非正規労働者の比率が高まるとともに、男性正社員の所得も低下してきました。こうした経済的な変化が、働くことに対する女性の意識を変えたと考えられます。女性は結婚や出産で辞めるという思い込みで女性に機会を与えないことが、逆に女性の離職を招いているとも考えられます。また学卒時に強いキャリア意識を持っている女性ほど転職しています。このことが、企業の女性に対する人的資本の投資をさらに抑制するという悪循環を招きやすいことになります。女性の活躍を推進するためには、このような考え方も大切です。
(2015年8月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)