iPS細胞の備蓄

 京都大学iPS細胞研究所が、iPS細胞をストックするための細胞を病気の治療用として外部機関に提供し始めています。他人のiPS細胞を使うと、免疫の働きで拒絶反応が起きる恐れがあります。日本人の多くと共通する免疫タイプを持つ人を探してiPS細胞を作れば、この問題を解決することができます。現状では備蓄してあるiPS細胞は、日本人の17%に拒絶反応なしで使えるとしています。2017年度末までに35割をカバ-できるようにストック細胞を増やそうとしています。
 iPS細胞から作った治療用細胞は、患者の体内に入れるため、医薬品並みの厳重な品質と安全性が求められます。理研が臨床研究に使用したiPS細胞も、徹底的にゲノム解析がなされています。iPS細胞ストックの細胞もすべてゲノムが調べられています。また変異とがんとの関係も問題となります。解析技術が進み精度が上がれば、変異も見つかりやすくなり、がんと無関係なのに治療に使えないと判断してしまう可能性もでてきます。iPS細胞に気になる遺伝子変異が見つからなくても、治療に必要な細胞を作る過程で、性質の変化や変異が起こることがあります。動物実験などを繰り返し、がんが出来ないのを確認することが何よりも大切です。

(2015年8月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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