人工知能ワトソン

 米IBMのコンピュ-タ-「ワトソン」が、米国クイズ番組で人間との対戦で勝利して以降、人工知能に対する期待感が急速に大きくなっています。近年、デジタルなテキスト情報が、大量にインタ-ネット上で得られるようになったことが最大のポイントです。高度な言語処理や、コンピュ-タ-が自ら学習して判断力を磨く機械学習技術の開発も重要な役割を果たしていますが、勝利を導いたのは、圧倒的なテキスト情報量の増大です。
ワトソンは、現在医療や金融での利用の可能性が考えられています。例えば、がん治療の分野では、肺がん、乳がん、前立腺がんなどに関する質問に答えられるようにしています。しかし、期待される応答ができるようになるまでには、時間をかけて人手による膨大な知識の注入が必須となります。コンピュ-タ-が自ら様々な書物からテキスト情報を読み、勝手に勉強して知識を増やし、賢くなっていくわけではありません。医師が日々生み出される莫大な学術文献を完全に読み込むことは物理的に困難です。コンピュ-タ-は、それなりの手間をかければ医師が役立つと感じる情報を提示し、支援できるレベルに到達しています。大量デ-タの活用は、人間では不可能な超人的な能力を新たに生み出しつつあります。しかし、重要なのはITの力を見極め、応用分野と積極的に融合を進めることに尽きます。

(2015年8月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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