卵巣組織の凍結保存と移植―Ⅳ 

メリットとデメリット

 卵巣組織凍結は、より多くの数の原子卵胞を保存できるだけでなく、卵巣組織移植後はエストロゲン分泌によりホルモン補充ができるという利点があります。月経発来も期待でき、妊孕性の温存だけでなく、卵巣欠落症状の改善を期待することができます。さらに、卵巣摘出術は月経周期と関係なく行うことが可能であり、腹腔鏡を用いて比較的簡易に施行できることから、がん治療開始まで時間的猶予が無い場合にも実施できます。また、未受精卵子凍結が不可能である未婚女性や小児・若年成人のがん患者にも応用することが可能です。
 一方、デメリットとしては、卵巣組織移植後にがん細胞の再移入による再発を起こす危険性が考えられています。白血病では、組織所見並びに免疫組織化学染色でがん細胞が確認されなかった患者の75%で、染色体異常がPCR法にて検出されています。また、完全寛解している白血病患者の凍結卵巣組織片に50%で、PCR法によって特異的分子マ-カ-が陽性に認められたとの報告があります。卵巣組織凍結の適応を決める際、また治療寛解後凍結卵巣組織を融解して移植する際にも、必ず主治医(がん治療医)と産婦人科医の間で密な話し合いが必要です。

(吉村 やすのり)

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