結婚を希望し、子どもを持ちたいと思う人が減少していないのに、未婚率は年々上昇しています。若い男女の妊娠や出産に対する希望を叶える第一歩は、女性にとって医学的にみて理想的な妊娠年齢が、25歳から35歳であることを知ることより始まります。結婚や妊娠が、望まない妊娠、避妊というネガティブな切り口で捉えるものではなく、いかにしたら妊娠できるか、妊娠することの素晴らしさといったポジティブな考え方で思春期から教育することが大切となります。これまでの文部科学省による学校教育は、生殖に関する知識の啓発という観点からは十分とはいえず、若い男女が妊娠現象を考える上で有用な情報が得られる手段とは必ずしも考えにくいものがありました。生殖年齢にある女性が、この時期に分娩できるような社会や職場の環境づくりが何よりも大切です。そのためには、高齢妊娠の困難性や危険性を思春期より教育することが重要となり、その先導者たらん産婦人科医の役割は枢要なものとなります。
このたび、文部科学省は高校の保健体育の副読本に不妊の実態や生殖年齢について記述を加え、妊娠や出産に関する教育の強化を図ることにしています。この副読本の改訂には、有村治子少子化担当相の御指導の下、私も積極的に関わらせて頂きました。教科書を改訂することは大変な作業です。こうした副読本が国公立・私立の高校で使用されることは素晴らしいことです。
(2015年8月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)