育児と介護、一つ一つでも大変なのに、これらが同時にのしかかるダブルケア状態に陥る人が増えてきています。晩婚・晩産化で子育て期が遅くなり、親の介護時期と重なってしまうためです。横浜国立大学の相馬直子准教授らは、2012~2014年に5府県で6歳未満の子どもを持つ母親ら約1900人に実態を調査しています。介護にも携わっているとする回答が約1割に上り、過去に経験した人も約1割いたことが明らかになりました。今後可能性があると答えた人を含めると、約4割がダブルケアの当事者であり、すでに身近な問題になっています。背景にあるのは晩婚に伴う晩産化です。1985年には、9千人に満たなかった40歳以上での出産した女性は、2014年に5万人を超えました。出産全体に占める割合は1985年の0.6%から2014年には5%に急増しています。
ダブルケアは企業にとっても悩ましい課題です。労働力人口が減っている状況で、ダブルケアによる離職が増えるのは中小企業にとって重大なリスクになります。どうすれば仕事と育児・介護を両立できるのかを早急に検討する必要があります。行政や企業が支援策を整えることも大切です。ただ、現状ではダブルケアに直面して悩んでいる人の多くは女性です。育児も介護も女性の役割といった意識から変えていかなくては、高齢社会を支えきれないと考えられます。
※ダブルケアとはType3のことを言います
(2015年8月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)