アルツハイマ-病では、アミロイドβという物質が10~20年程度かけて脳内に蓄積し、やがてタウという別の物質も蓄積して、記憶障害などの認知障害に至ると考えられています。ただ、アミロイドβが著しく蓄積した人でも発症しない人もおり、何が発症の引き金になるのかが必ずしもはっきりしていません。認知症につながるリスク要因として糖尿病や高血圧、肥満などの生活習慣病や、喫煙などがあげられています。専門家が重視しているのが、運動不足によるリスクです。認知症予防のために何か1つといえばまず、運動不足の解消に努めることが大切です。
国立長寿医療研究センタ-では、軽度認知障害と診断された高齢者約300人に対し、週1回90分の運動を実践するプログラムを10カ月間実施しました。運動プログラムがない健康講座だけのグル-プと比較しました。運動プログラムに参加したグル-プは、認知機能や言語機能が維持されていました。また、対照グル-プにみられた脳の特定部位の委縮傾向がなかったとされています。運動プログラムとして同センタ-が推奨しているのが、単に体を動かすだけでなく、頭を使いながら有酸素運動をするというやり方です。
(2015年8月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)