厚生労働省は、2014年度の1人あたり医療費が31.4万円となり、2.0%増加し、過去最高を更新したと発表しています。このところの医療費の高騰は止まるところを知りません。高齢化に加えて、医療の進歩で高価な薬や検査のための医療機器が増えていることに起因します。総額も40兆円を超えました。これにより、保険料や税金を多く納める現役世代の負担が膨らんでおり、医療費の効率化に向けた制度の見直しが欠かせません。
後発医薬品の使用を増やし、ベット数を減少させるなど医療の枠組みを改めることも大切ですが、医療費の支出を減らすためには、患者の窓口負担を増やさないことには対応できない状況に陥っています。今回40兆円に膨らんだ医療費の財源を見ると、患者の窓口負担は1割強にすぎません。窓口負担は原則3割ですが、患者数として多くを占める75歳以上は1割ですむことも一因です。社会保険制度は、収入のある現役世代が高齢者を支えることにより成り立っています。少子高齢化が急速に進むわが国で今の仕組みを放置すると、現役世代や企業の負担が膨らみ経済活動に水を差しかねない状況です。
(2015年9月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)