子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)摂取の奨励再開を求める声明について―Ⅲ

 日本産科婦人科学会は、子宮頸がんとHPVワクチンに関する科学的根拠に基づく正しい知識と最新の情報を常に国民に向けて発信してきました。今後、接種勧奨が再開された場合に、接種希望者とそのご家族に対して、接種医がワクチンのベネフィットとリスクの十分なインフォームドコンセントを行い、相互信頼関係の下に接種が行われる体制の構築に努力してきました。日本では毎年約1万人が子宮頸がんに罹患し、約3,000人が死亡しています。最近特に20〜30歳代に増加しており、若い女性や子育て世代の女性が子宮頸がんに罹患し、妊娠能力や命を失うことは、深刻な問題として捉えられています。子宮頸がんの予防対策として細胞診による検診が行われてきましたが、日本の検診受診率が30〜40%台(2013年は全国平均32.7%)であり、欧米先進国の70〜80%台と比較して低いことから、検診のみでこれ以上子宮頸がんの死亡数を減少させることは難しい状況です。2015年6月に発表された国のがん対策推進基本計画の中間評価報告書においても、主ながんの中で子宮頸がんのみ死亡率の増加が加速しています。厚生労働省第6回副反応検討部会のデータでは、HPVワクチンの国内販売開始以降、接種により回避することができた子宮頸がん患者数は13,000人〜20,000人、死者数は3,600〜5,600人と推計され、今後これを接種しないことによる不利益に関しても科学的根拠に基づいて考慮することが必要です。

(吉村 やすのり)

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