文部科学省は、全国の国立大学に通知を出し、教員養成系と経済学部や文学部など人文・社会科学系の学部・大学院に対し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むことを求めています。現在の特に国立大学における人文・社会科学の学生数は少なく、人文科学系の学生の86%、社会科学系の88%は、私立大学の学生です。人文社会系の改革は国公私共通の課題であり、まずは国立大学に問題提起し、国立大学が変わる中で私立大学も自ら改革しないと生き残れないという方向なるかもしれません。
日本の成長のためには、技術開発力の強化が不可欠です。国の財政事情が厳しい中で、理系人材育成を強化するには、国立大学の理系シフトも一つの考え方なのかもしれません。しかも、少子化で苦しい財政事情にある私立大学側からすれば、国立大学はお金がかかる理系を主に狙い、文系は実績を持つ自分たちに任せてほしいとの考え方が成り立つかもしれません。しかし、米ハ-バ-ド大学など世界のトップ大学は、文系・理系問わず高い評価を得ています。人文・社会系を軽視すると世界ランキングがますます遠ざかると思います。日本の弱点は、人文・科学系であるともいわれており、文理融合型の学部を模索するような方向転換も良いかもしれません。
(2015年9月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)