乳幼児がB型肝炎ウイルス(HBV)に感染すると、将来肝硬変や肝臓がんになる恐れがあります。わが国は世界に先駆けて、HBVに感染している母親から生まれる赤ちゃんにワクチンなどを打って予防する事業に取り組み、母親からB型肝炎に感染する子どもは激減しました。母子感染によるHBVの持続感染者は、4000人に1人程度となり、事業開始前の10分の1以下に減少しています。以前は母子感染を予防すれば、B型肝炎は根絶できると思われていました。しかし、海外との行き来が盛んになるにつれ、HBVを持った人との接触の機会が増え、感染する例が増加しています。
これまで母子感染を防げばよいと思っていましたが、社会情勢が変わり、今は生まれてくる赤ちゃんすべてにワクチンを打つべきだと考えられるようになってきました。HBVは基本的には血液を通じて感染します。唾液などの体液にもウイルスは含まれるため、日常生活で感染する可能性もあります。赤ちゃんの時にウイルスに感染すると、90%以上がウイルスを体内で持ち続けるキャリアになり、将来肝硬変や肝がんになるリスクが高まることになります。
(2015年10月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)