市区町村が実施する胃がん健診をめぐって専門家による厚生労働省の検討会は、今年9月、これまでの胃X線検査に加え、内視鏡検査を推薦するとの中間報告をまとめています。見つかった胃がんが早期なら、口から入れる内視鏡で治療できる場合があります。胃がんは、初め胃の内側にある粘膜層にでき、下層へと深く広がっていきます。がんが粘膜層か粘膜下層にとどまっていれば、一般的に早期がんと言われます。内視鏡的粘膜下層剥離(ESD)の対象となるのは、基本的には早期がんでもがんが粘膜層にとどまるとみられる場合だけです。
がんの深さ(深達度)を治療前に正確に知ることは難しいとされています。そこでESDで切り取ったがん細胞を病理医が詳しく調べ、がんが下層に達していたと判断される場合などは、追加の外科手術が必要になります。内視鏡治療をして、その結果手術になる可能性があることも十分に説明し理解してもらう必要があります。ESDは外科手術に比べて歴史が浅いのですが、現在は全国の主要な病院で出来るようになってきています。出血や胃に穴が開く合併症が起きることがありますが、器具の改良が進み、止血や穴をふさぐ処置が内視鏡下で適切にできるようになってきています。
(2015年11月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)