娘を望む人が増えています。家の跡継ぎとなる息子を希望した父系社会が崩れるなか、娘を中心とした娘社会ともいえる現象が少しずつ現れてきています。海外では、男女産み分けのための着床前スクリ-ニング検査が実施されています。日本産婦人科学会は、命の選別につながるとして着床前診断を重い遺伝病など一部を除き認めていません。そのため、海外で着床前スクリ-ニングを受けているクライエント夫婦もみられます。最近では、体外受精で受精卵を複数つくり、凍結して米国へ送り、染色体で性別を判定する着床前診断を受け、女児の受精卵を子宮に戻して出産するケ-スもみられます。総費用は約300万円前後です。
なぜ女性なのか、家意識が薄れ、跡取りとしての子育てから、楽しむための子育てに変化したことが影響しています。晩産化が進み、1人しか産まないなら話し相手になる女の子という声もあります。実家を頼れず孤立した育児環境で、男の子の育て方に悩む母親もいます。息子の嫁より自分の娘に老後の面倒を見てほしいというのは自然な感情です。2010年の国立社会保障、人口問題研究所の調査では、子ども1人の場合に夫婦が望む性別は、女が68%で、男は31%にすぎません。
(2015年11月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)