米英中3国の科学者団体は、ワシントンで開かれていた国際会議で、ヒト受精卵の遺伝子を狙った通りに改変できるゲノム編集技術について、妊娠させないことを前提に受精卵を使った基礎研究を容認する声明を発表しました。中国研究チ-ムが、今年4月にゲノム編集でヒト受精卵の遺伝子操作を試みたことを発表しました。その後、国際的な批判が高まり、ル-ル作りの必要性が指摘されてきました。会議は、米科学アカデミ-、英王立協会、中国科学院の主催で開かれ、日本を含む約20カ国の関係者も参加しました。
受精卵から子どもが生まれれば、体のすべての細胞に影響し、精子や卵子を通して子孫にも伝わります。会議では、ゲノム編集技術で受精卵や精子や卵子など生殖細胞の遺伝子を操作した場合、その安全性や子孫に与える未知の影響、倫理面などの問題点が指摘されました。安全性や有効性などの課題が解決される前に治療目的に使うのは無責任としましたが、基礎研究については子宮に戻さないことを条件に事実上容認しました。わが国でも総合科学技術会議などでの議論が必要になります。
(2015年12月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)