デザイナーベビー(designer baby)とは、もともとは受精卵の段階で遺伝子操作を行うことによって、親が望む外見や体力・知力などを持たせた子供の総称をいう。しかし、子どもが特定の性質を持つように事前に遺伝子を設計することは、技術的にも論理的にも強く問題視されている。クローン人間とは異なり、デザイナーベビーを産み出すためにクローン技術は必ずしも必要ではない。
現在、医学的に可能なことは、目的とする遺伝子を持った子どもを新たに生むことである。白血病などの難病をもった子どもの治療のために、白血球の型が一致する受精卵を選択する目的で着床前診断が行われている。世界においては、これまで数例の実施例が既に報道されている。
白血病の5歳の男児の治療に必要な臍帯血を確保するために、両親が体外受精をし、子宮に戻す前に着床前遺伝子診断(PGD)で、息子と白血球の型が一致する受精卵を子宮に戻し、無事女児を出産した例が有名である。また、骨髄の生成ができない遺伝病であるファンコニ貧血症を患う女の子を助けるために、その病気を引き起こす遺伝子変異のない胚をPGDで選び、そこから生まれた赤ちゃんの臍帯血から健康な幹細胞を採って移植した例などである。これらのニュースは世界中の耳目を集めたが、兄弟姉妹の命を助けるためにPGDを使ったポジティブな例である。これも一種のデザイナーベビーと言えるだろう。
(吉村 やすのり)