結婚した男女は同じ姓にすることを定めた民法が、憲法に違反しないと最高裁が判断しました。その理由としては、夫婦が同じ名字を名乗ることは社会に定着しており、合理性が認められるとの判断です。しかしながら、15人の裁判官のうち3人の女性全員を含む5人は、違憲だとする意見を述べました。反対の5人の裁判官は、女性の社会進出などの時代の変化を踏まえて、この規定の問題点を指摘しています。 制定当時夫婦同姓には合理性が認められましたが、女性の社会進出は近年著しく進んでおり、改姓で個人の特定が困難になる事態が起きており、別姓の必要性が増しているとする反対意見が述べられました。
旧姓を通称使用することにより、その不利益が緩和できるとしたことに対しては、改姓が原因で法律婚をためらう人がいる現在、別姓を全く認めないことに合理性はないとしています。同姓のメリットとして、夫婦や親子だと印象づける、夫婦や親子だという実感に資するなどの利点があげられます、しかしながら、同姓でない結婚をした夫婦は破綻しやすい、あるいは夫婦間の子の成育がうまくいかなくなるという根拠はないと思われます。
一方で多数意見は、夫婦同姓は家族を構成する一員であることを対外的に示し、識別する機能がある、嫡出子が両親双方と同姓であることにも一定の意義があるなどとしています。選択肢が用意されていないことが不当であるという主張に対しては、裁判所が積極的に評価することは難しく、むしろ国民的議論、民主主義的なプロセスで幅広く検討していくことがふさわしい解決だとしています。社会の受け止め方に依拠するところが多く、国会で広く論ぜられるべき事柄なのかもしれません。
個人の尊厳をもとに多様な家族のあり方を認めることは、成熟した社会には必要なことです。こうした俯瞰的な視点から、選択的別姓を含めた国会での論議が大切となります。
(吉村 やすのり)
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