生殖医療を考える―Ⅺ

生殖医療の法的問題―②

 特に、第三者を介する生殖補助医療に関しては、厚生科学審議会の専門委員会および生殖補助医療部会において、1998年より5年余の年月をかけ検討され、精子・卵子・胚の提供などによる生殖補助医療の実施のためのガイドラインが作成された。また法務省法制審議会においても、出生児の民法上の親子関係についての中間試案が発表された。これらの報告書に基づく法案が、2004年の通常国会に提出されることが予定されていたが、現在まで法案は国会に提出されていない。
その後、日本学術会議は、法務大臣および厚生労働省からの連名で代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題についての審議の依頼を受け、代理懐胎の規制の是非について医学的側面、倫理的・社会的側面、法的側面より検討を加え、20084月に提言をまとめている。それによれば、代理懐胎については法律による規定が必要であり、それに基づき原則禁止とすることが望ましいとされた。営利目的で行われる代理懐胎には処罰をもって臨み、処罰は施行医、斡施者、依頼者を対象とする厳しいものである。ただし、厳重な管理の下での代理懐胎の試行的実施(臨床試験)は考慮されてよいとされている。母体の保護や生まれてくる子の権利、福祉を尊重し、医学的、倫理的、法的、社会的問題を把握する必要性などを鑑み、先天的に子宮を持たない女性および治療として子宮の摘出を受けた女性に対象を限定している。しかしながら、代理懐胎に関しても必要な立法化に向けての準備は開始されていない状況にある。
(吉村 やすのり)

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