不妊治療の公的助成

 国は、体外受精しなければ妊娠が難しい世帯所得730万円未満の夫婦への公費助成を実施しています。今年度補正予算で初回の限度額を15万円から30万円に拡充する予定です。一方、4月からは初回治療の時点で4042歳の場合は助成を6回から3回までに減らします。また助成対象の女性に42歳までという年齢制限を設けます。高齢妊娠・出産によるリスク増加などが理由となっています。
 今回の改定は、医学的エビデンスに基づいています。これまでは10回の助成でしたが、6回に減少しました。助成金を受けて妊娠したカップルは、そのほとんどが6回までに妊娠していました。40歳以上の妊娠率は極めて低く、流産率も高いことにより、40歳以上は3回までとしました。43歳未満としたのは、43歳以上の妊娠では母子ともに与えるリスクが高くなることに起因します。医学的見地からすれば公的助成は、諸外国と同様に40歳までとしてよいと思われますが、わが国において体外受精を受けられる女性は、40%以上が40歳以上です。そのため助成は43歳未満としています。こうした年齢制限は、治療中止の一定の目安にもなります。立ち止まって治療を断念することを考えるキッカケともなります。赤ちゃんに恵まれなくても、夫婦のきずなの深まりなど結果として得るものはきっとあります。

(2016年2月18日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)

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