ヒトは生まれ、成育そして成熟してやがて結婚をし、子どもを産み育て、やがて年老いてその一生を終える。今、女性のこのようなライフスタイルは経験したことがないような変化にさらされている。産婦人科は女性のライフサイクルと密接に関連のある診療科であり、産婦人科医療は女性のライフサイクルの変化により大きな変化を遂げている。最近のわが国においては、思春期の早発化、性交年齢の若年化、高学歴化とともに晩婚化から出産開始年齢が遅くなっており、未婚化も相俟って少子化に拍車がかかっている。このような女性のライフスタイルの変化に伴い、婦人科の疾病構造にも変化がみられるようになってきている。
初経の低年齢化については12〜13歳を推移しており、大きな変化はみられていないが、性行為開始年齢の早傾化に伴うクラミジア感染症が増加し、子宮の感染症発生動向にも変化がみられている。また、子宮頸癌の原因ウイルスであるヒトパピロマウイルス感染による子宮頸癌は若年者に増加傾向がみられる。晩婚化、少子化は婦人科領域では子宮内膜症や子宮体癌などの増加をもたらし、周産期医療の領域では高齢妊娠などのハイリスク妊娠の増加に加えて、子宮筋腫や子宮頸癌などの疾患を合併することも多くなり、これまでにはなかった問題への対応が迫られるようになってきている。
(吉村 やすのり)