女性のライフサイクルと病気―Ⅲ

女性のライフステージを対象とする女性医学において、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は女性の生涯にわたる健康管理を行う上で、重要な疾患として位置づけられます。この病気の名前を覚えてください。

PCOSは月経異常を主症状として、若い女性の5~10%に認められる病気です。その原因は不明ですが、その本態はインスリン抵抗性(糖尿病になりやすい体質)と男性化症状(多毛、にきびなど)と考えられています。

思春期には月経異常とくに月経不順がみられますが、これは排卵が起こりにくいことによります。成熟女性になっても肥満や不妊症の原因となることがあります。肥満、特に内臓脂肪の増加により、将来糖尿病、高脂血症、高血圧などのメタボリックシンドロームになりやすくなります。また排卵障害や肥満は、子宮内膜に対して持続的な女性ホルモン刺激をもたらし、若年性の子宮体癌を引き起こすことが知られています。

PCOSの治療の基本は、若い女性には月経異常を正常化させることが大切です。そして、メタボリックシンドロームにならないよう予防することが必要となります。そのため思春期から月経のコントロールをするためにピルの服用が推奨されます。小児期や思春期にはじまる性成熟期から更年期にいたる女性の一生、すなわち女性のすべてのライフステージを対象とする管理が、PCOS女性にみられるメタボリックシンドロームの発症の予防につながるものと考えられます。

(吉村 やすのり)

 

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