減数手術と新型出生前診断―Ⅱ

今回の異常胎児の減数手術と新型出生前診断は、胎児が中絶されるという点で、同じ問題を包合しています。検査をして胎児に異常がでた場合、クライエントは中絶を選択されるケースが大半です。新型出生前診断は遺伝カウンセリングを行えば臨床研究として認められているのに、異常胎児の減数手術は認められないというのではダブルスタンダードとなってしまいます。異常胎児が中絶できるのか否かについては、母体保護法の改正も含め、広く国民全体で考えるべき時期に来ています。

 現時点では、減数手術は母体の安全や胎児の生命的予後を改善する上でやむを得ぬ処理と考えられます。現在7割以上の体外受精では1個胚移植が実施されていることもあり、体外受精などの生殖補助医療によってできる多胎は、多いに減少してきています。しかし、排卵誘発においても多胎が予想される場合には排卵を起こすことを中止するなどの処置はとられていますが、完全に多胎を防止することはできません。これらのケースに減数手術が行われています。日本産婦人科学会は、多胎を防止するための見解を早くから出し、会員に対して徹底した指導をしてきており、わが国は世界でも最も少ない多胎発生率を示す国に成長してきました。メディカルプロフェションとして多胎をつくらないような努力をさらに続けるべきだと思います。しかし、異常な胎児を中絶してよいかどうかの判断は一学会できるような問題ではありません。

 現在の母体保護法では、胎児が異常であるとの理由で中絶することはできません。わが国では、これまでこのような生殖の生命倫理に深く関わるような問題に対して、日本産科婦人科学会に判断を委ねられてきました。しかしもうそういった時期ではないと思います。

(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。