患者は、長年医師が決めた治療を受けるだけの立場とされてきました。米国では、1973年に病院協会が患者の権利章典を作成し、いち早く改革に動き出し、1990年に連邦法に患者の自己決定権が加わりました。日本でもインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の考え方が徐々に浸透し、1997年の医療法改正で理念が明確に位置づけられました。推奨される治療法などを記した診療ガイドラインづくりに患者が参加するケースも増え始めています。
近年、SDM(Shared Decision Making)という考え方が注目されています。治療過程を共有し、医師が示した選択肢から患者が治療法を選ぶことになります。インフォームドコンセントと比べ、患者の意思決定権は強くなります。医師から説明を受け、治療の同意をするインフォームドコンセントをさらに進め、可能な限りの治療方法・手段のメリットやデメリットを患者に提供し、患者自らの意志で決定することです。医療は患者と医師の共同作業です。リスクや限界も含め情報を共有し、信頼関係を築かなければ、安全で安心な医療は実現しません。主役となる患者が、任せるから参加するに意識を変えることが大切です。
(2016年3月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)
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