疾患を発症しやすい高いリスクを持った人を対象にして、予防医療を施すのがハイリスク・アプローチです。しかし、生活習慣病は多くの人が大なり小なり発症リスクを抱えています。近年の予防政策では、発症予備軍だけに生活改善を求めるのではなく、社会全体を健康な方向へ導くのがポピュレーション・アプローチです。
日本に限らず世界の多くの国は、病気になる恐れが強い人に介入するハイリスク・アプローチに力を入れています。もちろん個人の健康を守ることは大切ですが、実は社会全体を見た場合、疾患リスクと人口分布の関係は山のような曲線を描き、中程度のリスクを抱えた人が最も多くなります。山のピークを健康な方向にもってゆくことが重要です。しかしポピュレーション・アプローチは政策の効果が見えにくいところがあります。しっかりと費用対効果を検証し、社会への働きかけ方を考えることが大切です。健康に無関心な人にどう訴えていくかも課題となります。
(2016年3月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)