一億総活躍社会

 安倍首相は、アベノミクスは第2ステージへ移り、一億総活躍社会の実現を政府の目標に掲げました。少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持するとしています。実現に向けて新3本の矢と、それに対応した3つの目標も同時に発表しました。現在約12,700万人の日本の人口は、約50年後の2060年には約8,700万人に減ってしまいます。これを新3本の矢で1億人にとどめようとするものです。
 そのための第1の矢は、強い経済と称して、今は約500兆円の名目国内総生産(GDP)を2020年頃に戦後最大の600兆円に引き上げることを目標に掲げています。第2の矢は、保育所を増やしたり、幼児教育の無償化を進めたりする子育て支援です。今は1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出産率は1.4程度ですが、これを20年代半ばに希望出生率(国民の希望がかなった場合の出産率)1.8に高めることを目標にしています。第3の矢は社会保障で、目標は年10万人を超えるという介護離職者を20年代初頭にゼロにすることです。
 しかし、いずれの目標も実現へのハードルは高いものがあります。現在約500兆円のGDPを600兆円に増やすには、名目で年3%の経済成長が必要になります。この20年間で一度も達成できていません。出産率1.8も約30年前の水準で、実現は簡単ではありません。現在の子育て支援や待機児童対策だけでは、若い世代の人々が子どもを産むとは考えられません。若い世代が子どもを持ちたいと思えるような社会を作らなければなりません。新3本の矢で最も実現が難しいと考えられているのが、この第2の矢です。少子化や介護について目標を掲げたことは大変評価できますが、そのための財源を確保することは容易ではありません。

(2016年4月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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