近隣住民の反対により保育園が開園を断念するケースが増えています。保育園建設に反対の声が上がる背景の一つに、子どもの声が騒音と捉えられる状況があります。訴訟に発展するケースもあります。保育園運営法人を相手取り、損害賠償と防音設備の設置を求める訴訟も起こっています。訴状によれば、子どもの騒ぐ声や太鼓の音、ハンドマイクの騒音がひどく、精神的苦痛を受けたとのことです。
子どもの声や物音が騒音と見なされないよう、東京都は2015年に環境確保条例を改正し、就学前の子どもの声などを数値規制の対象から除外しています。こうした建設反対の訴訟を起こすのは、ほとんどが静かな環境を願う高齢者です。待機児童の解消に向けて保育園を増やすためにも、周囲の理解を得ることが重要です。保育園の建設は、待機児童対策というだけではなく、持続可能な町づくりと捉えることが大切であり、住民と共に取り組むべきだと思われます。子どもは、そもそも元気で大声を出すものです。近隣に保育園ができることは喜ぶべきことのように思えますが、理解が得られないことは残念です。
(2016年4月16日 読売新聞)
(吉村 やすのり)