フランスに学ぶ

 フランスの出生率は70年代半ばに2を割り込み、日本を下回る時期もありました。70年代以降は、女性の社会進出を支援することが家族政策の大きな目的になりました。政策効果が表れ、1.6台で底を打ったのは90年代で、2008年に2を回復するまで34年かかりました。
 フランスでは子育ての負担よりも、手当や税制優遇など給付が多くなっています。年収3万ユーロの家庭で第3子まで育て上げると、給付の額は計約3,900万円に達すると言われています。家族政策への財政支出は、日本の1%台に対してフランスは3%に達しています。日本が出生率2.1とフランス並みの手当や保育サービスを目指すなら、年間13兆円の財源が必要になります。消費税率を5%幅上げ、すべて子育てに回す計算になります。増税に頼らず社会保障を組み替えるなら、医療費の窓口負担増など、社会保障費のうち高齢者向けの割合を8割台から7割台に減らす必要があります。
 フランスでも3歳以下の子ども約240万人のうち、託児所に入るのは1割に過ぎません。それをカバーするのが保育ママの存在です。国内に31万人もいます。保育サービスに加え、給付面も手厚いものがあります。フランスでは、子育てする家庭向けの代表的な家族手当は、2人以上の子どもがいる家族だと、2人目に対し月約130ユーロが出ます。子どもが14歳になると加算され、20歳まで支給されます。子が3人以上になるとさらに手当が増えます。保育ママを利用して働く親には、補助として手当も多く支給され、家族が多いほど所得税が優遇される制度もあります。フランスでは、家族手当が医療や年金と並ぶ社会保障の柱になっています。子育て支援は、将来年金を払ってくれる人の確保につながると考えられています。
 わが国は、今こそフランスに学ぶべきです。

 

(2016年5月3日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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