2015年の合計特殊出生率は1.46と微増し、出生数も100万5,656人となり前年より2,117人増加しました。この出生率は21年ぶりの高水準です。しかし、人口置換水準は2.07であり、このように出生率が低いままでは少子高齢化の克服は到底望めません。政府は若い世代の希望がかなえば実現するとみられる希望出生率1.8を目標に掲げています。
少子化克服の柱は、待機児童の解消です。施設設備と保育士人材の確保により、2017年度末までに保育の受け皿を50万人分増やすことにしています。全国の待機児童は2015年4月時点で2万3,167人で、5年ぶりに増加しました。人口が減っても待機児童が減らないのは、共働き世帯の保育ニーズが高まっているからです。政府が施設増の決めての1つとみるのが企業内保育所です。今年度から認可保育所よりも保育士や定員の基準を緩め、自治体への届け出だけで新設できるようにしました。事業者は認可保育所並みの補助金がもらえます。
人材確保も急ぎます。賃上げが早道とみて、保育士の給与を2%、平均月額で約6,000円引き上げます。現場のリーダー的な存在のベテラン保育士については4万円の上積みを目指しています。保育士の平均月給は22万円で、全産業平均より約11万円低い状況です。賃上げが広がれば、資格を持っていても働かない保育士の職場復帰も進むと思われます。しかし、待機児童解消のための施設や人材の確保は、少子化対策の入り口に過ぎません。子どもを産み、育てやすい環境の整備が今後の最重要課題です。
(2016年5月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)